国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)との共同研究で新しい太陽電池に用いられる素材開発に成功 ―ペロブスカイト太陽電池の耐久性向上に貢献―

2022.03.09製品情報

日本精化株式会社は国立研究開発法人 産業技術総合研究所 ゼロエミッション国際共同研究センター 有機系太陽電池研究チーム 村上拓郎研究チーム長、小野澤伸子主任研究員と共同で、新たな再生可能エネルギー源として最も期待されているペロブスカイト太陽電池について、ドーパントと呼ばれる添加剤を必要とせず、高い性能が得られる新規有機ホール輸送材料を開発しました。本技術はペロブスカイト太陽電池の耐久性の大幅な改善につながることが期待されます。なお、この技術の詳細は、2022年3月25日に日本化学会第102春季年会にて発表いたします。

 

産総研プレスリリースへのリンク

https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2022/pr20220309/pr20220309.html

 

 

【用語の説明】

◆ペロブスカイト太陽電池

有機と無機の材料で作られるペロブスカイト結晶から成るペロブスカイト層が電子輸送層とホール輸送層に挟まれた構造を有している。ペロブスカイト結晶が光を吸収し、その光エネルギーで負電荷を持つ電子と正電荷を持つホールがペロブスカイト結晶層内で生成する。ここで生成した電子は電子輸送層を通して外部電極に取り出され、同様に生成したホールはホール輸送層を通して外部電極に取り出されることで電流と電圧が発生し、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。

 

◆ホール輸送材料

発電層内で発生したホール(正の電荷)を抽出し、電極に輸送するための材料。この材料の層をホール輸送層と呼ぶ。ペロブスカイト太陽電池ではSpiro-OMeTAD (2,2′,7,7′-Tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamino)-9,9′-spirobifluorene)やPTAA  (Poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-trimethylphenyl)amine])などのp型有機半導体が用いられることが多い。ペロブスカイト太陽電池においてはホール輸送層として有機物の材料(有機ホール輸送材料)を用いた方が無機材料よりも高性能が期待される。

 

◆ドーパント

電気伝導性などの物性を変化させる目的で半導体などに少量添加する不純物。ホール輸送材料の添加剤としては、リチウム塩やピリジン誘導体などの塩基性化合物、コバルト錯体などが知られている。

 

◆ペロブスカイト

結晶構造の1種。元々は酸化物の灰チタン石を指す言葉であるが、一般式ABX3で表せる物質の総称である。本稿ではAがメチルアンモニウムイオン(CH3NH3+)、Bが鉛イオン(Pb2+)、Xがハロゲン化物イオン(I)で構成されるペロブスカイト結晶 (CH3NH3)PbI3及びその派生物を示す。

 

◆電子輸送層

発電層内で発生した電子を抽出し、電極に輸送するための層。ペロブスカイト太陽電池では酸化チタンや酸化スズなどのn型半導体が用いられることが多い。