生産技術 - プロセス改善事例②

プロセス改善事例「ニトロベンゼン誘導体の還元反応の工業化と安定生産」

芳香族ニトロ化合物の還元反応は、学生実験のアニリンの合成に代表されるように、有機合成化学では非常によく用いられる手法です。
工業的には、学生実験でよく用いられる鉄-塩酸法のような方法はあまり有利ではありません。塩酸の中和処理が必要で、廃棄物が大量に発生するからです。
ニトロ基の還元方法として、水素ガスを用いた、パラジウム触媒での接触還元法もよく用いられます。

図1.芳香族ニトロ化合物の還元

図1.芳香族ニトロ化合物の還元

課題

① 廃棄物が多量に発生し、後処理が煩雑。

② 水素ガス(可燃性ガス)を加圧下で使用できる設備が必要。

検討方針

① 廃棄物の削減と後処理の効率化のため、触媒還元法とする。

② 還元剤として水素ガスの代わりに、ヒドラジン(液体)とする。

✻ ヒドラジンは、ロケット燃料にも使用される、効率的な水素源となります。

✻ またヒドラジンは、反応後には、水と窒素になるので、後処理面でも廃棄物面でも非常に有利です。

⇒ 種々検討を重ねることで、効率的に反応を進めることができる条件を見出し、
パイロットテストでも良好な再現性を得られました。

反応転化率

✻ 後処理は、触媒をろ過除去するだけで容易に目的物のアニリン誘導体が得られました。

✻ 加圧設備が不要となり、マルチパーパス設備での生産が可能となりました。

✻ 本条件の反応液は従来法と比べ安定性が良くなる副次効果も得られました。

工業生産後に起こってきた課題

スケールアップを終え工業生産を続けてゆく中で、新たな課題も見えてきました。

③ 同じ設備で硫黄系の化合物を生産後、触媒毒の影響で反応が不安定となった。

④ 触媒の担持体が変更されたことにより触媒活性が低下し、生産前毎に活性評価が必要となった。

触媒変更への挑戦

抜本的な課題解決には触媒の変更が不可欠と判断し、触媒変更へ挑戦しました。

⇒ 触媒探索では非常に多くのラボ検討を要しましたが、粘り強く取り組み、
鉄系触媒が有効であることを見出しました。現在も本触媒で工業生産を行っております。

触媒変更への挑戦

✻ 本触媒は、硫黄系の化合物(塩化チオニルやスルフィド)共存下でも問題なく反応が進行します。

✻ 活性炭と使用することで容易に活性を発揮します。

✻ 活性炭表面に吸着するため容易に除去でき、一般の産業廃棄物で処理できます。

最後に

当事業部では、実験室レベルの反応を、いかにして工業的なスケールで実施するかということを常に考慮して検討を行ってきており、その中には収率・品質だけではなく、安全性や環境への影響、廃棄物なども重要な課題となっております。

この事例では、生産設備も考慮した製造方法を検討することの重要性が分かります。
また、通常の生産品目においても、問題が発生した場合には、工場だけではなく、研究部門も一緒になって早期解決を図った例となります。

さらに、これまでの方法にとらわれず、より良い方法があれば、積極的に変更検討を進めることで、生産プロセス自体もより良いものへと改善できたものです。

なお、本方法は、現在の品目だけではなく、いくつかのニトロ化合物で同様に還元反応の有効性が確認されております。

  • お問い合わせ
  • プロセス改善事例②に関するお問い合わせは、下記フォームよりお問い合わせください。
  • お問い合わせはこちら